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<揺れる世界>ブラジルのジャーナリスト ネルソン・スーザ・アギアール イベント中止 収束祈る日系人:北海道新聞 どうしん電子版 - 北海道新聞

 私はフリーのジャーナリストだが、普段はイベント広報の仕事も多い。しかし、新型コロナウイルスで仕事がない。会議やスポーツ大会の中止で収入は減り、ソーシャルディスタンスを取るため友達にも会えない。想定外だったが、この時間を有効に使うことにした。

 一つは自分の部屋で研究している考古学と、もう一つは最近同居し始めた89歳の母親の面倒を見ることだ。しかし、歩行器で転ばないように毎日24時間目を光らせるのは不可能だ。1時間以上外出する時は誰かに留守を頼まなければならない。最近ではブラジルの日系人について取材した時がそうだった。

 取材に備え、親族で唯一仕事をしていない義理の妹に母の世話を頼んだ。取材をしていると日常が戻ったような気になったが、長くは続かなかった。27年のジャーナリスト経験とは異なり、新しいインタビュー手法が必要となった。握手のようなあいさつは拒まれ、「フェイストゥフェイス」のインタビューも、十分距離を取った上での「マスクトゥマスク」になった。

 ブラジルには日系人が多く住んでおり、日本文化を継承する施設も多い。しかし、首都ブラジリアの南の住宅街にある本派本願寺には、思いもよらない光景が広がっていた。誰もいないのだ。5年前、正式に歴史遺産に認定された寺では公式行事も頻繁に行われ、観光コースにもなっているが、今はほかの教会などと同様その扉を閉ざしている。

 パンデミックが原因で、本願寺は300人以上の子供が参加する花祭りなど、4月以降の行事を中止した。武術の稽古や仏教や日本文化に関するカルチャー講座も中断され、毎日100人はいた訪問者も途絶えた。寺に住む78歳の住職も完全に社会から孤立してしまったという。

 ブラジリアから北西40キロにある農業地帯では、約100世帯の日系人家族が暮らしているが、パンデミックの影響を大きく受けている。「こんなことは予想もしていなかった。世界的な危機が訪れるなんて」と農家のタカオ・アカオカさん(49)は語る。数週間前に花卉(かき)市場が閉鎖され、イベントなども中止され、ヒマワリと菊の売り上げが8割も落ちたという。かき入れ時の5月10日の母の日の売り上げも、大幅に落ち込んだ。4月21日に予定されていた首都ブラジリアの60周年記念式典も中止され、さらに葬式なども禁止された。

 サンパウロ州の果物農家ユキシゲ・ハラダさん(59)は、レストランなどの注文がなくなり、売り上げがゼロにまで落ち込んだ。ブラジル人は本来フルーツジュースが大好きなのだが、レストランや売店などはテークアウトの営業しかできず、飲み物も持ち帰り用の缶や瓶入りになってしまった。「全てが突然に起こった」とハラダさんは嘆く。

 サンパウロのアレシャンドレグスマン地区では、「ヤキソバミーティング」や「ウンドウカイ」など、日系人社会の伝統行事が中止になった。これらの行事は地区外からの訪問者も多いため、かなりの収入を失うことにもなる。夏以降もイチゴ祭りと「ボンオドリ」も中止が決まっている。日本語教室も中断されている。6人の教師と40人の生徒たちはいつ再開できるか分からないままだ。「7月のタナバタもできないだろう」とハツオ・カンノ・タカギ教諭(64)は嘆く。

 ブラジリアで毎年6月に開かれる日本祭りも今年は開催されるかどうか分からない。祭りで太鼓を披露する予定のリリアン・エイミ・ハラダさん(17)は、7月の太鼓選手権が中止されてがっかりしていたところ。「1月の夏休みはずっと練習していました。延期でもいいので、パンデミックが収まって日本祭りだけは開催してほしい」と願う。

 みんながリリアンのように事態の収まるのを願っているが、ブラジルでは検査数が極端に少なく、実際の感染者は把握している数字の10倍以上に及ぶと指摘する専門家もいるほどだ。指摘通りなら、経済的損失も、ソーシャルディスタンスも、あらゆるキャンセルももっと長引くことになるのだろう。(松本悌一訳)

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May 26, 2020 at 01:30PM
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