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「強権的だった」「世の中変わるのでは」 沖縄と長崎の声 安倍首相辞任 - 毎日新聞 - 毎日新聞

安倍晋三首相の辞任表明を受け、記者団の取材に応じる沖縄県の玉城デニー知事=那覇市の県庁で2020年8月28日午後4時半、遠藤孝康撮影

 「ずっと安倍政権に対峙(たいじ)してきたので、安倍さんがいなくなるのは不思議な感じがする」。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設を巡り、県民投票の実現にかかわった大学院生の元山仁士郎さん(28)は、安倍晋三首相の突然の辞任表明に驚きを隠せない。

 元山さんが国政選挙で初めて投票権を得たのは2012年12月の衆院総選挙。その選挙で政権に返り咲いた安倍首相は辺野古移設を進め、18年12月には埋め立て予定海域への土砂投入に踏み切った。元山さんらの署名活動で実現した19年2月の県民投票では、辺野古埋め立てへの反対が7割を超えたが、移設工事を止めることはなかった。

 「安倍さんは『丁寧に説明する』『県民投票結果を真摯(しんし)に受け止める』と語ってきたが、中身の伴わない空虚な言葉だった。国民の声に耳を傾けず、特に沖縄には強権的な姿勢を貫いてきた」と元山さんは振り返った。

 辺野古移設に反対する政党や団体でつくる「オール沖縄会議」の共同代表を務める照屋義実さん(72)は「県民のことを全く顧みない7年半あまりで、やっと終わるんだという安堵(あんど)感がある。県民の希望がかなえられる政権が生まれてほしい」と話した。

 玉城(たまき)デニー知事は28日、県庁で記者団に「大変驚いている。まずは静養され、回復されることを祈る」としたうえで、安倍政権が辺野古移設を進めたことに「県の姿勢とは相反する方向で工事を進めているのは大変遺憾に思う。次の政権には、まずは辺野古の工事を直ちに中止し、沖縄との対話の場をつくっていただきたい」と述べた。

 被爆地・長崎からも安倍首相の辞任で転機を期待する声が聞かれた。

 「率直に言うと、ほっとしている。少しは世の中も変わるのではないか」。3年前、核兵器禁止条約に日本政府が批准しない方針を示したことに対し、長崎を訪れた安倍首相に「あなたはどこの国の総理ですか」と迫った被爆者で原水爆禁止日本国民会議の川野浩一議長(80)=長崎市=は安堵の表情を浮かべた。

 長崎の被爆者団体は、安倍首相に核兵器禁止条約への署名・批准を再三求めてきたが、安倍首相は20年の平和祈念式典でも条約には言及しなかった。川野さんは「今月の平和祈念式典後の被爆者団体の面会時も非常にそっけなかった。次の首相は核廃絶に向かって国際平和を重んじる人になってほしい」と期待した。

 また、広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る訴訟では、国は原告の被害を認めた広島地裁判決を受け入れず控訴した。長崎県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(77)は「科学的根拠を乗り越えて被爆者援護を拡大するという政治的判断を下すことも可能だったはず。新首相には被爆地域の拡大と被爆2世の援護拡大を求めたい」と話した。【遠藤孝康、松村真友】

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