人工知能(AI)やビッグデータを活用し、住民に高度な利便性を提供する最先端都市「スーパーシティ」の実現に向けた構想が大阪で本格的に動き出した。今年末にも政府が開始する区域認定に向けた公募に大阪府市が合同で参加し、全国で5カ所程度とされる選定を勝ち取りたい考えだ。最新技術のショーケースとなる2025年大阪・関西万博の開催も、大阪が選定を勝ち取るうえでの追い風になると期待されている。(黒川信雄)
コロナで法整備
スーパーシティとは最新のICT(情報通信技術)を駆使した次世代型都市のことで、今年5月の通常国会で成立した改正国家戦略特区法で実現が可能になった。複雑な制度設計や個人情報流出の懸念から法整備が遅れていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で非接触のデジタル技術の重要性が改めて認識され、成案にこぎつけた。
スーパーシティは、デジタル技術を活用した都市の概念「スマートシティ」からさらに踏み込んでおり、「スーパー・スマートシティ」などとも呼ばれる。
首相の指示で複数分野の法的規制が一括緩和され、従来は規制で困難だった自動運転や遠隔診療、小型無人機(ドローン)の活用などが自在にできるようになる。さらに個人や企業、地域に関するさまざまなデータを収集、整理する「データ連携基盤」と呼ばれる技術を活用し、最新技術とそれらのデータを連携させた効率的なサービスを提供できるようになる。
大阪府市に専門部署
大阪府市は昨年10月、万博会場となる大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)と、JR大阪駅北側の再開発地域「うめきた2期」をスーパーシティの対象区域とする方針を決定した。府は今年4月、スーパーシティ認定に向けた作業や府全体のICT化などを促進する専門部局「スマートシティ戦略部」を発足。市もICT戦略室内に専門チームを立ち上げた。
大阪が目指すスーパーシティでは、先端技術を活用した便利な生活が可能になる。例えば、夢洲の万博会場跡地に建設された高層マンションの住人は、ドラッグストアなどで最新のデジタル技術を使って健康状態をチェック。情報は即座にAIで解析され、栄養管理された食事や、最適な運動メニューの提案を受けることができる。
また病院、薬局、スーパーなどをスムーズに移動できる自動運転車の定額送迎サービスをスマートフォンからの依頼で利用可能。買い忘れたものがあっても、ドローンに運んでもらえる。
大阪府市がスーパーシティを推進する背景には、ICTの遅れが大阪経済を支える中小企業に深刻な影響を及ぼしていることがある。府のスマートシティ戦略部を指揮する元IBM常務執行役員の坪田知巳氏は7月、オンラインで開催されたフォーラムで「IT化が遅れた中小企業は、新型コロナへの対抗策をまったく持ち合わせていない実態が浮き彫りになった。これらの企業をいかに救うかが課題だ」と訴えた。
中小企業に好機
行政の動きを関西財界も支援する。特に活発な活動を展開するのが大阪商工会議所だ。
大商は昨年7月、大阪でのスーパーシティ実現に向けた提言を発表。大阪での少子高齢化の進行や健康寿命の短さなどに着目し、大阪エリアが得意とする健康医療分野の研究とデジタル技術を生かした取り組み、交通・金融分野での次世代サービス実現の必要性などを訴えた。今年7月には、スーパーシティのデータ連携基盤への活用も視野に、都市インフラをデジタル技術で認識する研究開発を開始する構想を打ち出した。
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October 13, 2020 at 04:50AM
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