毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 ムラーノ(2004-2015)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:NISSAN
■北米専売車としてデビューするも、熱烈オファーで世界戦略車へ
そもそもは北米市場向けのCUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)として開発されたが、そのデザインがあまりに素晴らしかったせいで「ウチの国でも売ってくれ!」との要望が世界中から殺到。
その流れで日本でも発売されたものの、さすがにサイズ的にアメリカンすぎた(大柄すぎた)せいか大ヒット作とまでは至らず、2015年を最後に日本市場からは消えていった美しきSUV。
それが、日産 ムラーノです。
初代ムラーノ(Z50)の北米市場でのデビューは2002年。
時代背景としては、まずは1990年代半ばおよび後半にトヨタからから登場したRAV4とハリアーが「FF系乗用車のプラットフォームを使ったコンパクトSUV」のブームを作り、そして2000年登場の初代BMW X5が「プレミアムSUV」という概念を発明した少し後に、初代ムラーノは登場したのです。
ムラーノのボディサイズは全長4770mm×全幅1880mm×全高1685mmと、当時の日本人の感覚からすると「堂々たる体躯」でしたが、北米の感覚では「ちょうどいいニッサン」ぐらいのものだったでしょう。
車台は初代ティアナからの流用で、搭載エンジンは3.5L V6が基本。ただし日本仕様には2.5L直4も用意されました。
前述のとおり、そもそもは北米向けのSUV(CUV)だった初代ムラーノですが、2003年10月の東京モーターショーに出品した北米仕様が大反響を呼んだことで、2004年10月からは日本でも販売されることとなりました。
北米市場ではスマッシュヒットとなった初代ムラーノは、日本でも「まあまあ」程度は売れ続け、2008年まで販売を続行。そして同年9月、2代目Z51型へのフルモデルチェンジを受けました。
2代目ムラーノの車台は、これまた2代目となった日産ティアナのホイールベースを50mm延長したもので、ボディサイズは全長4845mm×全幅1885mm×全高1700mmと、全高以外は初代より若干大ぶりに。
搭載エンジンは、セッティングはやや異なるものの、型式的には初代と同じ3.5L V6と2.5L直4です。
この2代目ムラーノも北米を中心とするグローバルではよく売れたのですが、日本では今ひとつパッとしないまま2015年4月、販売終了となりました。
その後、海外向けには「3代目のムラーノ(Z52)」が発売されていて、これがなかなかカッコいいのですが日本には導入されず、日本におけるムラーノは廃番となったままでいます。
■今だったらきっと売れている!? 日本で大成できなかった本当の理由とは
これだけ美しくも斬新なデザインを備えていて、グローバルではまずまずのヒット作となった日産ムラーノが日本ではパッとせず、2代限りで消えていった理由は何だったのでしょうか?
よく言われるのは「日本で使うにはサイズ的に大きすぎたから」という理由です。
これは確かにそのとおりでしょう。初代ムラーノが登場した2004年当時によく売れていた「比較的大柄な国産車」といえばトヨタの初代アルファードぐらいで、そのほかの人気車はおおむね小ぶりでした。
その初代アルファードにしたって全幅は1805mmでしたから、初代ムラーノの全幅1880mmというのは「さすがにちょっと……」と感じた人は多かったはずです。
また初代および2代目のムラーノは、その大きな図体にさほど燃費性能が良いわけでもない3.5LのV6エンジンを積んでいましたので、実燃費もイマイチでした。
「そのあたりもムラーノが敬遠された理由のひとつ」と言われており、筆者もそれに対しての異論はありません。
ですが、あえて根本的な理由をひとつ付け加えるとしたら、それはサイズでも燃費でもなく「早すぎたから」なのではないかと思っています。
確かにムラーノは大柄でしたが、2020年の今となっては、ムラーノに近いサイズのSUVも日本市場でよく売れています。
例えば現行型のトヨタ RAV4もマツダ CX-5も「ムラーノより少し小さいぐらい」のものですし、「コンパクトSUV」と形容されることも多い現行型BMW X3の全幅は、初代および2代目ムラーノより広い1890mm。それでも、日本市場でけっこう売れています。
つまり日産ムラーノは、2000年代から2010年代初頭の車としては確かにデカく、燃費もいまいちなSUVでした。
しかし、もしも2019年ぐらいに登場したSUVであったなら……「デカいけど、死ぬほどデカいわけでもない」ぐらいのSUVとして認識され、そして当時とはぜんぜん違う「燃費良好な新世代パワーユニット」も採用していたことでしょう。
そしてその結果として、バカ売れはしないまでも「そこそこの数は売れる、きわめて美しいデザインのSUV」として、日本市場でも代を重ねていくことができたのかもしれません。
とはいえ肝心の日産が経営の観点から日本市場向けの車種を絞りまくっている状況ですから、「大柄なSUVを日本にも投入する」という選択自体が無理筋な話。
それゆえ上記は、単なる夢想というか寝言にすぎないわけですが……。
■日産ムラーノ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4770mm×1880mm×1685mm
・ホイールベース:2825mm
・車重:1720kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、3498cc
・最高出力:231ps/5600rpm
・最大トルク:34.0kgm/2800rpm
・燃費:9.3km/L(10・15モード)
・価格:343万3500円(2004年式350XV)
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March 06, 2020 at 03:00PM
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