〈いけばな〉をする男性が増えてます。ある投資会社の社長Kさんは、スポーツマンで華道もたしなむ文武両道に秀でた方です。社内に「華道部」を作り10年近く。スタッフの創意工夫を養ったり、思考の切り替えに良いと聞きました。
部員は20~30代。いける姿を見れば「集中できてるな」など、仕事の状態がわかるそうです。面白いことには、行き詰まっていたスタッフでも草花をいけているとスッキリ明晰(めいせき)になってくるとか。 アミニズムの精神(※1)と仏教の供花(くげ)(※2)から生まれた〈いけばな〉は、アーティスティックな精神修養です。表現者の手を加えて装飾する西洋のフラワーアレンジメントと異なり、花と呼吸を合わせて清らかな場をつくり無心で祈ることが起源です。花を切るからには生かす。これは万物宇宙と人の関わりに対する責任も伴います。サステナビリティの最先端ですね。
室町時代には、書院造り(※3)の座敷飾りとして花を真っすぐに立てて飾る立花(りっか)(※4)が武家・貴族社会で客人をもてなすためのハレ(※5)の文化となりました。真っすぐ立つ花。自然にはない姿です。権力者たちはそこに自らの意志と継続する力を見いだしました。
茶の湯の台頭により、ありのままの自然を生かす茶花(※6)も広がりました。安土桃山時代に「花は野にあるように」を追求したのが千利休(※7)です。秀吉が朝顔の茶の湯を求めて利休を訪ねると、路地の朝顔はすべて摘み取られ、茶室の床に一輪だけ朝顔が生けられていたという逸話は有名です。丹精込めた朝顔を摘み取り最高の美しさだけを一瞬残す工夫。リソースを生かすために雑をそぎ落とす決断力。ビジネスパーソンが学べる要素がいっぱいあります。
様式はあれど、本来〈いけばな〉は「花と器」さえあれば始められます。心惹(ひ)かれる草花を求め、小ぶりな器を用意しましょう。花が生きる器を見立てて、自分の好みに気づくのも楽しいものです。初心者は器の口が狭いものを選べば、渾身の一輪を「投げ入れる」だけで様になります。慢心せず、「なぜ、この花をこうやっていけたかったんだろう?」花の命と向き合いはじめたら〈いけばな〉道が拓(ひら)けます。
(※1)アミニズム:万物に神が宿っているという宇宙観。
(※2)供花(くげ):仏または死者に花を供えて供養すること。仏教の伝来とともにインドから中国を経由して日本に伝来。
(※3)書院造り(しょいんづくり):室町時代〜近世初頭に完成した武家住宅の様式。和風建築の原型。儀式・接客のために「座敷」「床の間」などの身分序列に応じた空間と芸術が生まれた。
(※4)立花(りっか):古来、神仏へ供えられてきた花は、真(本木)と下草で構成される「立て花(たてはな)」と呼ばれる〈いけばな〉を生み出した。やがて「立て花」は、客人をもてなす場に用いられるようになり、室町時代後期、「立花(りっか)」へと発展した。
(※5)ハレ:儀礼や祭りなどの非日常。ハレ(非日常)とケ(日常)の対で成り立つ概念。
(※6)茶花(ちゃばな):茶会の床に飾る花。花入れに自然の中に咲いている本来の姿のようにいける。
(※7)千利休:安土桃山時代に「わび茶」を完成した。織田信長、豊臣秀吉に仕える。最後は秀吉により切腹を命じられる。
Photograph: Ryohei Oizumi
Styling: Shiho Yokokawa
Text: Sayaka Umezawa (KAFUN INC. /MOIKA GALLERY)
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November 02, 2020 at 08:41AM
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